ピックウイック症候群
以前勤めていた病院での話です。
夜、自宅でくつろいでいると病院から電話です。研修医からです。
「169cm 169Kgの高度肥満患者さんが減量目的で入院中。夕方からの意識障害です」と。
主治医は私ではなかったのですが、夜の救急オンコールで呼ばれました。オンコールとは自宅待機ということです。当直で別の医者はいるのですが困ったときに電話がかかってきます。
病院に到着すると高度肥満患者さんは覚醒障害があり(眼が開いていないということです)ますが手足は動かしています。(麻痺はありません) 低血糖はありません。
研修医が動脈の酸素と二酸化炭素の状態を測定してくれました。酸素は異常なし、二酸化炭素が108mmHgあります。(正常は40-45mmHg) pHは7.1(正常値は7.4)です。CO2ナルコーシスと診断しました。呼吸の換気量が低下すると酸素の取り込みは問題ありませんが、呼気からの二酸化炭素の排出が追い付かず血液が酸性化する状態をCO2ナルコーシスと言います。意識障害の原因となります。
高度肥満患者さんで腹部が太鼓腹の場合、呼吸に必要な横隔膜が下に下がりにくくなり換気量低下の原因となります。肥満により首の部分の脂肪が気道狭窄を起こし睡眠時無呼吸の原因にもなります。また気道が閉塞していなくても中枢性無呼吸を起こしたりもします。このような状態をピックウイック症候群と言います。
患者さんは超巨体という印象です。
治療は換気量を増やすことです。挿管して人工呼吸器にて換気量を増やせばよいのですが、夜間ということと、超巨体で挿管困難が予想されるため薬物使用による介入はリスクが高いと判断し酸素化だけ維持するようにしました。(手足を動かしているため管を留置しても無意識で管を抜いてしまう可能性が高く深い鎮静が必要になります)
翌日には意識が改善していました。夜間は非侵襲的な呼吸補助の機械を使用することとしました。
