メニュー

不明熱? いいえ、蜂窩織炎でした

[2026.05.20]

既往歴に高血圧および後縦靭帯骨化症の手術歴があり、杖歩行で通院されている当院かかりつけの68歳女性が、39℃の発熱を主訴に受診されました。感冒症状は認めませんでした。

診察時、意識は清明で会話もしっかり成立しており、血圧や脈拍にも明らかな異常は認めませんでした。本人に疼痛部位の有無を確認したところ、「痛いところはない」とのことでした。

発熱患者を診察する際には、まず感染源の所在を念頭に置きながら診察を進める必要があります。咽頭痛、咳嗽、喀痰、下痢、関節痛、腹痛、胸痛などの自覚症状に着目し、詳細な問診を行いましたが、これらの症状はいずれも否定されました。

しかしながら、問診で「痛みはない」と述べられていても、全身を丁寧に診察することが重要です。問診後、四肢の関節や筋肉を触診し、圧痛の有無を確認していったところ、右下肢に触れた際に患者さんが「痛い、痛い」と訴えられました。ズボンをめくって観察すると、右下腿に発赤、腫脹、熱感を認め、蜂窩織炎と診断しました。

同時に、蜂窩織炎との鑑別が必要な重篤疾患として、壊死性筋膜炎やガス壊疽なども念頭に置く必要があります。皮膚の水疱形成や血圧低下などがあれば、より重症の感染症を疑いますが、本症例ではそのような所見は認めませんでした。

一般的に、蜂窩織炎の原因菌としては黄色ブドウ球菌および溶血性連鎖球菌が想定されます。本症例では病変範囲が比較的広範囲であったことに加え、独居であり活動性の低下も認められたため、入院加療が必要と判断しました。そのため、近隣病院へ蜂窩織炎の診断で救急搬送となりました。

患者さんが「痛いところはない」と話されていても、実際に全身を診察し、本当に疼痛がないかを確認することは極めて重要です。もし蜂窩織炎に気づかなければ、不明熱としてCT検査のみが行われていた可能性もあります。画像検査に過度に依存せず、丁寧な身体診察を行うことの重要性を改めて認識させられた患者さんでした。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME