正常圧水頭症の患者さん
82歳男性が外出時に転倒し腕が痛いとのことで妻と一緒に来院されました。腕の診察では発赤、変形、腫脹などはなくレントゲンでも骨折は認めませんでした。これで「めでたし、めでたし」ではないのです。転倒した時の状況を詳しく聞きました。「前につんのめって、止まらなくなった」「前傾姿勢と妻に指摘される」と言われました。この情報で「おやっ」と思います。前傾姿勢や突進現象はパーキンソニズムの特徴です。
「転倒することはよくあるのですか?」と質問しました。本人は「今回が初めてだ」とおっしゃいます。しかし同席していた妻は「転倒しそうになったことは何回かあります」と。誰に質問するかで内容が変わる点に注意が必要です。
尿漏れも時々あるとのことです。歩いているところを観察するとやや足幅が広いように見えます。この辺は観察する医者の主観です。
尿失禁、認知症、歩行障害は「正常圧水頭症」を疑う所見でもあります。まずは頭部のCTを撮影することにしました。当院ではCTのような高価な機械はありません。近くの病院に依頼して頭部CTをその日に撮影してもらいました。放射線科医の読影では「正常圧水頭症」と記載されています。
正常圧水頭症を疑うときは髄液を除去してその前後で歩行などの動きを確認するタップテストが必要です。背中から針を刺して脊髄液を採取するのです。採取前後で歩行様式が大きく変化するなら脳室-腹腔シャントの手術が必要となります。またパーキンソン病の場合はDATスキャンという検査が有効です。
これらの検査は当院のような小さな診療所ではできませんので基幹病院の脳神経内科に紹介することとなりました。
