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地域医療にこそエビデンス・ベースト・メディスンを

[2025.05.19]

糖尿病の治療目的は何でしょうか? 血糖値を下げることでしょうか? 

糖尿病治療の真のアウトカムは合併症を予防することであって血糖値を下げることだけではありません。下記に糖尿病による合併症の主なものを挙げています。

<<糖尿病の合併症>>

急性期合併症
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 高浸透圧性脱水
慢性期合併症
  • 大血管障害:心筋梗塞 脳梗塞
  • 微小血管障害:腎症 眼症 神経症


では、血糖値が下がれば合併症は予防できるでしょうか?それはランダム化比較試験をしてみないとわかりません。現在種々の経口血糖降下薬が市販されているわけですが、大きく2つに分けられます。一つ目は血糖値が下がるが合併症予防にエビデンスがない薬、もう一つは合併症予防にエビデンスがある薬です。「エビデンスがある」とはランダム化比較試験においてプラセボとの有効性比較で「統計学的に差がある」とされているという意味です。スルホニルウレア、DPP-4 阻害薬、チアゾリジン系、α- グルコシダーゼ阻害薬、グリニド系などは血糖値が下がりますが合併症予防については質のいい研究でエビデンスは証明されていません。ビグアナイド系、SGLT-2 阻害薬、GLP-1 受容体作動薬はエビデンスが証明されています。しかしだからと言ってこれらの薬に変更しましょうというわけではありません。


治療ゴールをどこに置くかによって選択する薬剤は変わることを知っていてください。高齢の方では合併症予防ができなくても血糖値が低下し副作用が少ない薬剤を選択することが大事かもしれません。働き盛りの方では合併症予防も考慮した薬剤選択が必要かもしれません。大事なのは薬を選択する医師が患者の状況に合わせて治療ゴールを設定し、薬剤選択ができるようになることです。有効性以外にも副作用、投与回数、コスト、薬の管理者が誰なのかも考える必要があります。


EBM というと患者さんを同じ治療ラインに乗せることと勘違いされる方がいます。「心不全の患者には全員βブロッカーを投与しなければいけない」のでしょうか?確かに収縮障害のある患者にβブロッカーを投与することは生命予後改善という点で有効性が証明されています。しかしEBM は本来一人一人の患者の状況に合わせて治療方針を考えるオーダーメイドメディスンを行うためのものです。全員を同じ治療ラインに乗せるレディーメイドメディスンが目的ではありません。患者の背景、希望、人生観などを主治医がくみ取りそれに合わせて治療ゴールを設定しランダム化比較試験の結果も考慮したうえで薬剤を選択するというのが正しい使い方です。そこには主治医の裁量が入る余地があるわけです。

くれぐれもevidence biased medicine とならないようにご注意を。 これらの話は「JAMAuser’ s guide to the medical literature」という本に書かれています。


地域医療を行う医師にこそEBM の使い方を知ってもらう必要があると考えています。有名な先生のspecialist opinion や薬屋さんの販売促進に振り回されることなく、患者の方針を決定する主体として主治医の役割を果たすことができればポリファーマシーの問題も改善されるのではないでしょうか?

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