動脈解離
84歳の女性患者さんです。
高血圧があり他院をかかりつけとして通院していましたが、場所が遠いので近くである当院からの処方を求めて来院されました。しっかりと会話もでき自分で歩いて来院されました。紹介状はありません。薬手帳を確認し、既往歴や生活歴などの病歴を聞いていました。
夫は2年前に亡くなられていて独り暮らしとのことです。このような場合、前医に情報の提供を依頼し過去の経過情報を入手します。
問診していると慢性の咳があるとのことです。1か月以上持続する咳の場合、肺癌や結核の除外目的に胸部のレントゲンを撮影します。胸部のレントゲンを撮影すると、心臓の形がいびつです。心臓から出ている上行大動脈が蛇行しているのか?と思いました。肺自体には異常はありませんでした。画像で異常な所見を見つけた場合、過去の同じ検査と比較することが大事です。当院は初診でしたので、前医で胸部レントゲンを撮影したことがあるかを確認したところ、半年前にレントゲンを撮ったといわれました。早速、半年前の胸部レントゲンを入手して比較しました。すると半年前のレントゲンにも血管の蛇行を疑う所見があります。
本人も元気そうだし血圧や脈拍 酸素飽和度も異常はありません。念のため心臓のエコーで見える範囲を確認しました。心臓自体の動きや弁の動きは問題ありませんでした。しかし、上行大動脈がかなり拡張しているように見えます。
「ん? やっぱりおかしい」と感じ、近くの大きな病院の循環器内科に紹介しました。その日のうちに返事がきました。
診断名:上行大動脈解離
と記載されていました。動脈解離は命に係わる大きな病気です。上行大動脈の場合、手術の適応となります。一般的には「胸痛」を訴えるのですがこの患者さんには胸痛はありません。もしかすると半年以上前から動脈が裂けていたけれど症状がなく気づかれずに生活していたのかもしれません。
