たかがインフルエンザ されどインフルエンザ
冬にインフルエンザが流行すると鼻腔検査などで診断されることが多いと思います。
最近では喉にスコープをかざすと人工知能がインフルエンザかどうか判断してくれる検査機器もあるそうです。
インフルエンザは一般的には命に係わる病気ではありません。
インフルエンザウイルスが鼻咽頭に感染し発症しますが数日で免疫がウイルスを排除し症状は自然に回復してきます。
しかし症状を我慢するのはつらいので抗インフルエンザ治療薬が処方されることが多いと思います。
治療薬にはオセルタミビル(タミフル) ザナミビル(リレンザ) ラニナミビル(イナビル) バロキサビル(ゾフルーザ) ぺラミビル(ラピアクタ)などがあります。ザナミビルとラニナミビルは吸入薬 ぺラミビルは注射薬 オセルタミビルとバロキサビルは内服薬です。
一般的には治療薬は発症48時間以内の使用が有効とされています。時間が経ちすぎると薬の効果はあまり期待できないかもしれません。また薬剤を使用することで1-2日ほど症状緩和が早まるそうです。
しかしたかがウイルスの感染とあなどってはいけません。これは私が医者になって5年目ころ知り合いの医者から聞いた話です。
1月の終わりごろに30歳の女性が40℃の発熱と咽頭痛で救急外来を受診されました。研修医が診察し、インフルエンザの検査を行ったところ陽性でした。研修医は発症して24時間くらいでしたのでオセルタミビルという薬を出しました。
翌日、この女性は激しい倦怠感に襲われました。そして、もう一度同じ救急外来を受診しました。
別の研修医が診察し、昨日のカルテをチェックしました。昨日インフルエンザと診断されており、オセルタミビルが処方されているので
薬が効くまで自宅で経過を見るように説明しました。
さらに翌日、この患者は心肺停止状態で発見され、救急搬送となりました。心肺蘇生の結果、残念ながら亡くなられてしまいました。
おそらく死因はインフルエンザによる心筋炎となり致死性不整脈を発症したと思われます。インフルエンザによる心筋炎は稀な合併症ですが怖い病気です。
私は患者さんが同じ症状で2回受診した時や症状の増悪を訴えているときは自分が誤診している可能性を考えます。また診断が正しくても合併症が起きている可能性を考えます。
残念ながら医学は不確実な要素の上に成り立っています。
この患者の死を無駄にしないためにも次の患者にどう生かすかを考えなければいけません。医療において確実なことはありません。人の死亡率が100%ということを除いては。
